妊娠中の訪問リハビリはリスクが高いです。
病院など施設勤務であれば他の人に頼れますが、1人で現場に出る訪問リハビリは誰かを頼るわけにはいきません。
妊娠中は胎児への影響を考えて、重いものを持たないようにしたり、カフェインを控えたり、周りの人に禁煙してもらったりしていますよね。
療法士の方は妊娠していることを秘密にしている場合も多く、対処に困ります。
妊娠中期に入る安定期になるまでは流産のリスクがあり。あまり人に言いたくないですし、妊婦とわかると体を気遣って、リハビリを早く切り上げようとする人が続出します。
私は産休直前の妊娠7~8ヶ月までは利用者さんにお話ししてませんでした。
ここでは
- 妊娠中の訪問セラピストが困ること
- 具体的な対処法
を体験談から記載します。
妊娠中の訪問リハビリのトラブルと各対策
タバコの受動喫煙
タバコの副流煙による胎児への影響はデータがあり、避けるべきものです。胎児の低体重、その後の低身長のリスクが高くなります。
では、直接煙を吸わないタバコの匂いは??
ご家族や本人が喫煙していると部屋に匂いが染み込んでいます。
明らかなデータがない様ですが、衣類や髪などへの付着も影響があるという意見も散見します。
胎児を想えば、できれば避けたいところです。
対策
- 訪問してすぐ「換気」と称して窓を開ける
- 空気清浄機を勧める
- マスクを二重に装着
- マスクの口元、鼻部分に折りたたんだティッシュを挿入
- 鼻にティッシュを詰める
- マスクは訪問後すぐに交換する
- 服への匂いの付着があれば着替える
- 担当変更
正直、鼻にティッシュを詰めてまでリハビリしなきゃいけないのか?と思います。
喫煙の程度によりますが、ヘビースモーカー宅への訪問は出来るだけ避けましょう。
リハ中喫煙する人は…
- リハビリ中は禁煙!ルールを作る
そもそも1時間弱が我慢できない状態がダメです。
- 早めに妊娠を告げ配慮してもらう
- 担当変更
匂いによるつわりの悪化
正直つわりの時期が1番辛いですよね。
生活環境が劣悪な家もありますし、トイレ介助が難しい時期もあります。
私が妊娠に気づいたのは、すっごい汚いお家で初めて吐き気がしたからでした(既に1年訪問し、何も感じなくなっていた)。
一般に妊娠4ヶ月前後につわりは落ち着くと言われています。
しかし出産までつわりが続く人もいたり、つわりの程度は人それぞれです。
つわりが我慢できるものでないので、悪化するようであれば担当変更してもらいましょう。
どっちにしろ数ヶ月後には担当変更するので、早まっただけと考えましょう。
つわりは体調が悪いと悪化しますので、全体の仕事量を調整してもらうといいと思います。
対策
- 担当変更
- 短い期間だと割り切って我慢
- 全体仕事量の調整
- マスクの装着(二重にする、ティッシュの挿入)
- 吐きグセをつけない
運転が危険になる
周囲に理解されづらい理由
- 妊娠中は注意力が低下
- 産前より眠りが浅くなり、日中の眠気がある
- お腹が出て体幹前傾、回旋できない→周囲の状況確認をしづらい
- 事故の際、お腹がハンドルに挟まれて危険
- つわりなどの体調不良
妊娠中の運転はかなり気を使います。
移動時間には余裕を持たせて、いつもよりも丁寧な運転を心がけましょう。
対策
- 訪問時間に余裕をもたせる
- 危ない車には近づかない
- シートベルトは腹部を圧迫しないよう装着する
- 体調が悪い時は運転しない勇気をもつ
- 妊娠後期は事務仕事へ変えてもらう
カフェイン摂取
リハビリ後にお茶を出してくださる家も多いです。
困るのがコーヒー、緑茶、烏龍茶などカフェインが含まれる飲み物を出された時です。
調べると1日の摂取量に制限があるものの、全て数杯程度なら胎児に影響ないようです。
ご厚意ですので、できるだけお互いが気持ち良い方法で対応しましょう。
対策
- 妊娠希望者は妊娠前よりカフェインを控えていることを告げる
- 飲み物の提供を断る
- 飲み物の種類を変えてもらう
- 飲み物を残す
理由が難しいですが、
「トイレが近くてorよく眠れなくてカフェインを避けている」
「体調が悪いので早く失礼したい」
「アレルギーで…」(なぜか納得する人が多い)
はよく使うセリフです。
ベッド環境が辛い
ベッドがふかふか過ぎる
高級家具屋さんで購入した超ふかふかベッドは、妊婦にはバランスがとれずめちゃくちゃしんどいです。
褥瘡対策マットレスも同様です。せめて電動でリハビリモードがあればいいんですが…。
ベッドが狭い
お腹が大きくなってくると狭いベッドに妊婦+利用者さんが入るスペースがなくなります。
電動ベッドの1/3が物で埋まってるお宅で、70kg台女性と妊娠7ヶ月妊婦が残りの2/3へ。側臥位は何もできませんでした。
仰臥位も膝立ち位で腰を下ろす場所がなくて辛かったです。
対策
- 物が多い場合は一緒に片付ける
- ベッドに上がらないプログラムへ変更する
- 担当変更
利用者の体重が重い
片足の重さは体重の18.5%
ROMex.をするときに、BW80kgだと片足の重さ14.8kgを持つわけです。
これが40kgのおばあちゃんだと7kgですね。
体重が重い人のリハビリをすると、かなりの腹圧がかかってしまいます。
そしてそれを回旋させたり、屈曲させたり…かなりの重労働です。
対策
- ROMex.を行わないプログラムへ変更する
- activeROMex.を活用する
- 体の使い方を工夫する
- 担当変更
妊娠中の訪問リハビリで変更すべき点
訪問件数
訪問件数は非妊娠時より1〜2件少なくしてもらいましょう。
私が1人目妊娠時はフルタイムでMAX7→5件に減らして訪問していました。
- それぞれの地域での交通事情、移動所要時間
- キャンセルが出る率
- 40分訪問の比率
にもよります。
事務仕事がある場合は積極的に事務仕事を請け負うのも方法です。
- 月ごとの訪問件数と自分が稼いでいる金額を試算
- マイナスのない範囲で業務量軽減を打診
- 他業務への転換を打診
訪問リハビリは自分が稼いでいる金額がわかりやすいので、試算してみましょう。
リハビリをするだけが事業所に利益を生むわけではありません。
訪問リハビリ業務だけで言えば、自分の給与の倍程度稼いでいれば、特に文句は言われない印象。
フルタイムで単位数にかかわらず、80件/月は訪問していれば元は取れます。
つまり1日4件の訪問をこなしていれば、妊娠中でもマイナスにはなりません。
担当変更
妊娠初期の段階で訪問件数を減らしてもらう人も多いでしょう。
妊娠中であっても車や自転車の運転が欠かせない訪問リハビリでは、病院勤務や施設勤務のセラピストよりも妊娠中の女性に対する配慮が必要と感じています。
訪問件数を減らす際に、下記の利用者を優先的に担当変更しておきましょう。
- 移乗に介助が必要
- 喫煙者
- 肥満
- 住宅環境が悪い
- 住宅周辺環境が悪い(坂道がきつい、自宅がEVなし5Fなど)
- 長距離運転を必要とする
以上、経験上からの注意点をまとめてみました。
私見ですので、もっと様々な体験やご意見がありましたらご教授いただきたいです。