妊娠中期である6ヶ月に入り、とつぜん肋間神経痛になった理学療法士です。
妊娠中の肋間神経痛に悩んでいる方は
- 肋骨の痛みの原因が何かわからない
- 産婦人科?整形外科?何科にかかればいいか分からない
- ネット上に妊娠中の肋間神経痛の対処法がない
ことでお困りではありませんか?
専門知識があっても、肋骨の激しい痛み=肋間神経痛にたどりつくまでに時間がかかり、丸一日不安な時間を過ごしました。
肋間神経痛はふつうの怪我とはちがい、「神経痛」であるため、経験したことのない痛みを感じる方も多いはず。
さらに、妊婦だからこそ、重大な疾患が紛れているリスクや服薬による胎児への影響が考えられます。
妊婦の肋間神経痛に適切に対応するために、医学的な視点から
- 肋間神経痛の基礎知識、特徴
- 妊娠中の肋間神経痛への対処法、服薬について
- 理学療法士が教える肋間神経痛のセルフケア、予防策
について解説していきます。
肋間神経痛の基礎知識と特徴
肋間神経痛とは…
肋間神経 (→胸神経 ) に沿って起る痛み。痛みはうしろから前に,普通は片側に起り,右側よりは左側に多い。激しい痛みが発作的に起り,深呼吸,咳,高声の談話などによってひどくなり,肋骨の間を押すと圧痛がある。肋骨,脊椎,脊髄などの疾患によって起るものが多く,しばしば帯状疱疹を伴う。鎮痛剤などで痛みを押え,原因疾患の発見と治療にあたる。コトバンクより引用
理学療法士としては、お医者さんは原因不明の肋骨部分の痛み=肋間神経痛と診断する印象があります。
肋間神経は肋骨のせなか側から前に向かって、平行に走っている神経になります。
肋間神経痛では、せなか(胸椎)から出た肋間神経が胸の方へ向かう途中のどこかで挟まれて肋骨部分や胸が痛くなります。
胸椎といってもわかりにくいですが、長い背骨のなかで肋骨がついている背骨を胸椎と呼びます。肩甲骨の内側から背中の1/2あたりまでが胸椎ですね。
肋間神経痛かどうかわからない…
という場合には下の3つのポイントをチェックしてみてください。
- 内科疾患を除外できる
- 片側性
- 肋間神経に沿った限局的な痛み
妊娠中に肋間神経痛!対処法と薬について
妊娠中の肋間神経痛の注意点は痛みではなく
- 内科的な病気を見落とすこと
- 使ってはいけない薬を使い胎児に影響が出ること
です。以上の2つを避けるポイントを紹介していきます。
まずはかかりつけの産婦人科医に連絡
妊婦の激しい胸痛には注意が必要です。激しい胸痛は重大な内科疾患が絡むことがあります。
妊娠性高血圧、糖尿病ほか基礎疾患を抱える方は迅速に受診しましょう!!
基礎疾患がなくても電話相談でもいいので、主治医に連絡しましょう。
内科疾患は除外できるか?がポイント
重大な心臓の病気は血圧と脈拍を測ることが大事です。
家に血圧計があれば一度測ってみてください。
血圧計が家になく測れない人でも、高血圧を示す自覚症状(頭痛、めまい、目がチカチカするなど)があるか?をチェックしてみてください。
胸の痛み以外に普段とは違うこと(ふらつき、吐き気など)がある場合は受診が必要です。
脈拍は手首で簡単に測れます。
心拍数のほかに脈がとんでいないか、速くなったり遅くなったりしていないか、などのリズム異常(不整脈)がないかもチェックしましょう。
- 血圧が正常値(130/85mmHg以下)
- 高血圧を示す自覚症状がない
- 脈が正常(脈拍60〜90回/分、不整脈がない)
本当に肋間神経痛か確認するには?
肋間神経痛の特徴にあてはめよう
肋間神経痛の種類はさまざまで、痛みの程度は人によって違います。
以下の肋間神経痛に特徴的な2つのポイントを抑えて自分の肋骨の痛みと比較しましょう。
特徴①片側性
肋間神経痛の場合、痛みは左右どちらかに限られます。
特徴②肋骨に沿った限局的な痛み
肋間神経痛は肋骨に沿って背中から胸の方へ横に走ります。
幅はだいたい指4本分くらいの範囲に収まります。
デルマトームという範囲の1ブロック内程度に痛みが限られているなら、肋間神経痛の可能性が高くなります。
整形外科で診断=肋骨骨折でないことの確認
整形外科で正確な判断をするためには、レントゲンによるX線照射が必要です。
妊娠中でもお腹を保護すれば、レントゲン撮影は可能です。
レントゲンは主に肋骨骨折との鑑別に使用されます。
神経はレントゲンに映りませんので、肋骨骨折ではないことを証明して、肋間神経痛の疑いとするために検査します。
ただし症状から見て肋間神経痛の疑いが強ければ、胎児への影響も考えレントゲンを撮らない場合が多いはずです。
妊婦が整形外科にかかることについて
前述したように、整形外科では主に肋骨骨折ではないことの確認と肋間神経痛の確定診断を行います。
肋間神経痛だとしても、妊娠中に整形外科でできることはかなり限られます。
大半の痛み止めは処方できず、妊婦ということでリハビリが受けられない所も多いでしょう。
とはいえ、確定診断してもらうことで心理的な安定やマタニティ整体などの選択肢もでてきますので、近くに専門的な診断のできる整形外科があれば受診しましょう。
- 整形外科の受診は肋骨骨折の場合に有効
- 妊婦のリハビリに対応している整形外科は少ないので、リハビリを受けたいなら事前に電話確認すべし
妊娠中の肋間神経痛の薬について
肋間神経痛だと診断された場合、妊娠していなければ抗炎症剤や湿布が処方されます。
急にでた肋間神経痛は肋骨部分で炎症が起きて、神経痛が出ていると考えられるからです。
妊娠中の痛み止めの処方
妊娠中は抗炎症剤(炎症を抑える薬)は胎児へ繋がる動脈の収縮を促すため使えません!
カロナールなど、妊娠中や授乳中にも使える痛み止めですもありますので、処方してもらいましょう。
ただしカロナール自体に炎症を抑える作用はありませんので、効果は薄いです。
湿布の処方
一般的な湿布(モーラステープ、ロキソニンテープ)も胎児に影響を与える抗炎症剤のため使えません。
同じ成分が市販薬にも使われていますので、自己判断で市販の湿布を使わないように注意してください!
サリチル酸メチルを主成分とする冷湿布は使用可能と考えられていますが、自己判断で薬局で購入するよりも、受診して処方してもらうのが無難でしょう。
妊婦でも使える痛み止めや湿布はあるが、他のものに比べて効果は薄い
理学療法士が教える肋間神経痛のセルフケア
お風呂に入る
内科疾患ではないとわかった時点で、全身を温めることにしました。
胸郭が硬くなることによって、胸のどこかで肋間神経が圧迫されている可能性があったからです。
全身が冷え切っていましたので、少し高めの温度に設定してました。
昔から妊婦に冷えは厳禁といいます。
体を温めると全身の柔軟性が改善されます。
冷えて固まった背骨と肋骨のあいだの関節を柔らかくしましょう。
足の冷えは健康な人でもバランス能力の低下につながりますが、妊婦では腰痛の一因となる研究結果もあります。
腰椎と胸椎は同じ背骨です。
姿勢不良に起因する肋間神経痛も、冷えが影響する可能性があります。
⚠︎温めないほうがいいケースもある
- 患部が熱を持っている(炎症症状)
- 患部が腫れている(炎症症状)
- 発熱している(高熱による関節痛の可能性)
- 内科疾患を除外できない(血圧が高いなど)
炎症を起こしている場合は基本的にアイシング(患部の冷却)をオススメします。
肋間神経痛は患部が腫れることはまずないので、晴れたろ熱を持っている場合は外傷を疑いましょう。
マッサージする
マッサージする場所としては、肩甲骨の内側らへん。
できるだけ優しく撫でるようにマッサージします。
専門家であれば肩甲骨や胸椎を動かしたいところですが、素人ではマッサージが一番リスクが低く効果的だと思います。
痛みを我慢してまでマッサージする必要はありません。
夫が理学療法士なら良かったのですが、残念ながらフツーのサラリーマンですので、専門的なことは頼まずに優しいマッサージのみお願いしました。
寝返りをうてる環境を作る
寝ている時に何回も寝返りしていますか?
人体にとって寝返りはとても重要な運動です。
寝返りをすることで、体を伸ばした姿勢で無理なく背骨を左右に捻ることができます。
妊娠中〜後期になるとお腹が大きい妊婦さんは寝返りしにくくなり、片側ばかり向いて寝るようになる人も多いでしょう。
- 片側ばかり向いて寝ている
- 自分の寝るスペースが狭い(2人目以降妊娠のママさんに多い)
- 枕の高さが合っていない
といった原因が考えられます。
- 夜中に目が覚めたときに向きを変える
- 広い布団で寝る
- クッションを使用する
日々の生活習慣のポイント
同じ姿勢をとらず、適度にストレッチする
脊柱や肩甲骨を動かす運動を心がけましょう。
特に仕事でずっと座ってパソコン作業をする人は注意が必要です。
妊娠中期〜後期にはお腹が前に大きく出てくるため、腰部の動きが乏しくなるのが特徴。
大きくなるお腹が胸を押し上げるので、妊娠前より胸郭が横に広がりやすくなります。
もともと体が硬い人は胸郭がうまく広がらず、体に不調が出やすいです。
胸椎をしっかりと動かすためには肩甲骨の柔らかい動きは必要不可欠!
肩甲骨の運動はお腹の赤ちゃんへの負担も少なく、無理なくできますので必ずやっておきましょう。
カバンを変える
片側にばかりカバンを持つ人は要注意です。
ショルダーバッグやトートバッグを使っている方は両方の肩を同じくらい使うように気をつけましょう。
両肩を均等に使うのが難しい場合や重い荷物をもつ場合は、やはりリュックがオススメです。
リュックは産後もマザーズバッグとして使いやすいものを1つ購入しておくことをお勧めします。

深呼吸をする
妊娠中は子宮が大きくなり、胸郭の動きが少なくなると言われています。
このため風邪やインフルエンザが重症化しやすいとも。
深呼吸は胸郭(肋骨)を動かすには最適な活動です。
特に呼気(吐く)を意識しましょう。
子宮に押されてせり上がった肋骨を息を吐いてしっかり下げることで、肋骨と胸椎の柔軟性を引き出します。
1日2万回も息をするのですから、意識すれば良い効果を生みます。
胸と肩甲骨を下げるような意識で深く息を吐きましょう。
ストレッチの最中にも深呼吸をいれることで、胸郭をしっかり動かすことができます。
肋間神経痛のNG行為
無理に痛む部分を動かすのはNG
肋間神経痛は痛みがある部分に原因があるわけではないので、痛みを我慢してまで動かす必要はありません。
痛くない部分を動かして、痛みの連鎖を防ぐようにしましょう。
痛いからといって全身を固めていると、二次的に他のところが痛くなる原因にもなります。
無理に動かすと痛みを悪化させる原因にもなりますので、優しくマイルドに行いましょう。
自己判断で痛み止めや湿布を使うのはNG
自己判断で薬を使わないようにしましょう。
痛み止めは種類によって妊娠後期に胎児とお母さんをつなぐ動脈を収縮させ、胎児に重大な障害を引き起こすことがあります。
医師や薬剤師に相談の上、服薬しましょう。
妊娠中期(6ヶ月)の私の実体験
夜中に突然、右の背中〜脇〜右乳房にかけての激しい痛みに襲われました。
「とにかく右側の肋骨が痛い!」
寝返りもできず、ネコのように丸くなって眠るしかない状態。
肋骨の痛み=肋間神経痛だとは思わず、なにか悪い病気になったのではないか…と疑いました。
妊娠中に肋間神経痛になる人が多いと聞いていましたが、まさか自分がなるとは…。
妊娠中に2回目の風邪から副鼻腔炎で咳や鼻をかむことが多く、関節に負担がかかっていたのかもしれません…(体験談はこちら)。
そういえば急激に大きくなったお腹も肋骨を押しあげて、神経を圧迫する原因になっているのかも。
症状と経過
- 寝返りができない(左しか向けない)
- 腕をあげられない
- 胸が痛くて起き上がれない
胸〜乳首にかけての激しい痛みに乳腺炎を疑うほどでした。
妊婦で胸の張りはあるものの、乳汁がでるほどおチチがでているわけでなく、発熱もない…
授乳してもないのに乳腺炎になるのはおかしな話なので、整形外科的な何かを疑いました。
その後、発症1日目は全く動けずほぼ寝たきりで仕事を休みました。
肋間神経痛疑いをもってからやったとこは下記の通り。
- 血圧、脈拍チェック
- お風呂に入って体を温める
- ゆっくり休む
- 広い場所で寝る(夫に別室で寝てもらう)
- 肩甲骨の内側をマッサージする
対策をしたところ、2日目に痛みはマシになってきたので出勤。
肋骨部分は押したら痛い、激しい動きでなければ可能ですが、ゆっくり歩く必要があります。
仕事後、念のため内科を受診。
血圧、サチュレーション、脈、異常なし。
ドクターからも肋間神経痛の可能性が高い、整形外科でできることはあまりないとコメントあり、カロナールのみ処方してもらう。夫別室寝継続。
3日目に痛み軽減。
ようやく寝返りが可能になりました。
強く腕に力を入れると痛いが、日常生活には支障ないレベルまで回復。
カロナールをのまず経過。
なんとか4日目には痛みが消失するまで回復できました…!
肋間神経痛だと判断した理由

神経支配に沿っての横の痛みだった
脳から足に向かって多くの神経はタテに走るものですが、胸の部分で分かれた小さい神経(分枝)は横に走ります。
神経痛はその神経が命令している部分が痛くなる特徴があります。
デルマトームという神経支配の図をみてもわかるように、胸の部分では肋骨に沿って神経が走っているのがわかりますね。わたしはちょうど乳首のある部分、Th4の上下部分だけが痛みがあったので神経痛ではないかと疑いました。
片方の肋骨にしか痛みがなかった
肋間神経痛の原因となりうる神経根症状は片側に広がるという特徴があります。
ウデに痛みが広がっている場合(たとえば腕全体〜肩)は、頸部での神経圧迫を疑います。
また痛みが左右両方に広がる場合は、神経でももっと上の方で挟まれている可能性があります。
ただし、この場合は痛みが横に走ることはないので可能性から除外しました。今回は片側のTh4の支配神経野に痛みが限られていましたので、神経症状とみて間違いなさそうです。
痛みの原因に心当たりがあった
おそらく寝る姿勢が悪かったのが大きな原因です。
妊娠中期の6ヶ月になり、急激にお腹が前にでてきたため、片方ばかり向いて横向きでタブレットを触っていました。
夫と息子に挟まれて寝ていたため、寝るスペースが狭く、無意識に寝返りをうつ回数が減っていたようです。
妊娠中はおなかが大きく前へせり出すので、背骨のバランスが変化します。
前後方向のバランス変化は対応が難しいですが、左右への崩れは普段の生活スタイルを気をつけることで防ぐことができます。
左右のバランスをとるためにも、できるだけ両側へ寝返りする必要があります。
妊娠中の肋骨痛=肋間神経痛と自己判断しないこと!
先にも示しましたが、妊娠中の胸痛は重大な内科疾患である可能性があります。
今回わたしはたまたま専門家であり、信頼できる医療機関に相談の上、肋間神経痛と自己判断しました。
肋間神経痛だと自己判断せずにまずは何かしらの医療機関を受診しましょう。
妊娠中の母体の不調は、胎児にも影響するもの。
肋間神経痛は胎児へ直接は影響しませんが、飲み薬や湿布の使い方を間違えるとお腹の赤ちゃんへ悪影響を及ぼします。
使える薬を処方してもらった上で、生活習慣で肋間神経痛を改善してみてください。
地域によっては妊娠中でも受けられるリハビリもありますよ!(めちゃくちゃ数は少ないですが…)
安定期かつ医師の確認をとってからであれば、妊娠中にもできる整体もおすすめです。
妊娠中の整体は費用が高額になることも多いので、気をつけてくださいね…(調べて高額すぎて辞めました)。
医療機関へ相談の上、問題なければ生活習慣でセルフケアが一番。
しっかり肋間神経痛を予防してくださいね!
