子育てに関する本を読み続けて4年。
ようやく信頼できる書籍「学力の経済学」に出会えました!
現在10年目の医療関係者ですが、学生時代からEBM(Evidence Based Medicine)の重要性を叩き込まれてきました。
それに比べて…
教育に関する根拠(Evidence)が少な過ぎると感じませんか?
- 幼児教育の効果はあるのか?
- 有効な幼児教育とは?
- 就学後の学力に関連する要素は何なのか?
- 学力と将来の経済力は結びついているのか?
答えてくれるのが中室牧子著「学力の経済学」です。
ようやく出会えた、ごもっともな教育本!
自信を持ってご紹介します。
▶︎「学力」の経済学 /中室牧子を楽天で探す「学力の経済学」に私が感動した点
まだまだ幼児の母親であり、正直「学力」にはさほど興味はありません。
「早期幼児教育」という怪しげなものには日々疑問を抱いており、どうにかして否定してやりたい気持ちでいっぱいでした(笑)
乳児期とエビデンス
乳児期については医学的な介入を必要とすることが多いため、医学的な根拠をもった子育て方法が日々更新されています。
- 乳児期の保湿の重要性
- 離乳食の開始時期
- 乳幼児突然死症候群の防止策
- 乳児期からの予防接種
などevidenceに基づいて確立された理論であり、医学の進歩と共に発展してきました。
*医学的な情報に基づいた育児については、森戸やすみ先生の育児の悩み解消BOOKがオススメです。
乳児期は「子育て」が「命に関わる時期」であるため、積極的に研究されてきた成果でしょう。
しかし幼児期になると途端にエビデンスが減少します。
幼児期とエビデンス
乳児期を過ぎると情報が極端に古くなります。
「子育てが命に関わる時期」が終わり、医学の介入がなくなった子育ては、根拠のない教育論で溢れます。
そこで頼りになるのが「教育経済学」です。
例えば、ペリー幼稚園プログラムでは約40年の追跡調査が行われています。
早期幼児教育については賛否がありますが、いわゆる認知能力(算数やひらがなの読み書き)は小学校入学直後こそ差が出るものの、3〜4年生で差がなくなるという結果が出ています。
「学力の経済学」では将来の年収や犯罪率を左右するという非認知能力について詳しく解説されているのです。
就学以降のエビデンス
日本の教育界ではEvidenceが浸透しておらず、「これが良いだろう」という推定で動いているとのこと。
例えば少人数制のクラスは手厚く指導できるから学力が上がる「だろう」という推定で国が動いた結果、学力は変わらなかったとの結果が出ています。
教育については本当に賛否が飛び交っており、迷うことばかり。
- どういうご褒美を与えるのがいいのか?
- 子供は褒めて育てるべき?
- 高い学力を持つ友人と付き合うと良いのか?
などなど。教育で迷いがちな一般論についてズバッと回答をしてくれます。
経験に基づいて、ではなく、データに基づいて。
まずは自分が勉強
数ある教育本の中でも「学力の経済学」はかなり信頼できる一冊だと思います。
未就学児の親にもオススメ
学力と言いつつも、就学前教育の重要性も解いているので、生まれたばかりの子供を持つ親御さんに超オススメです。
「学力の経済学」の中でも触れられていますが、教育の収益率を親に周知すると学力が上がったという研究もあるほど。
非認知能力に対する幼児教育は就学前が一番収益率が良いと言われます。
まずは自分が勉強しよう
子供が賢くなってほしい、真っ当に育ってほしいと思うのであれば、自分が教育法を勉強するのが一番。
私個人としては今後は脳科学やこれからの時代に必要になる環境問題や気候変動についてなどを勉強していきたいと思っています。
その初手として「学力の経済学」は確実に好手。
エビデンスを読み解くのに慣れている子育て中の医療従事者にはかなりオススメです。
🔽マンガ版もあります。
「学力の経済学」の魅力
実はわたし、けっこうな量の教育本を読みました。
🔽家にある教育本、大半は興味なく売ってしまいました。
多くの書籍が「経験談」であることが多く「客観的なデータ」はないことにガッカリ。
その中で「学力の経済学」は今までの教育本にないデータたっぷりの本でした。
<学力の経済学の魅力>
- ベースは教育経済学
- 一般の人にも分かりやすい
- 根拠となる資料が明示されている
- 因果関係について説明してある
ベースは教育経済学
「学力の経済学」は教育経済学をベースに書かれています。
教育経済学(きょういくけいざいがく、英: economics of education)とは、教育と関連がある経済事象を取り扱う学問のことである。
教育経済学で取り扱われる問題としては、教育の経済的効果、教育の費用負担、教育における効率性と教育計画、教育の便益に関する分析が主である。教育経済学は、主として1960年以降に発達し、一般的には経済学が母体であると考えられている。
wikipediaより
教育経済学は1960年以降に欧米(特にアメリカ)で台頭してきた学問。
どの教育方法に金銭的にメリットがあるのか、数字上から読み解きます。
一般の人にも分かりやすい
30万部も売れていて、エビデンスに親しみのない人でも読みやすい本です。
データを並べるだけでなく、データの読み解き方やどう解釈するのか、不確定な部分も含めて説明されています。
医療の手を離れた幼児期から高等教育について説明されており、とても興味深い本となっています。
根拠となる資料が明示されている
参考文献や実験内容が明示されています。
本の最後14ページは全て参考文献。
その実験の不確実さについても読み解かれており、例えば母数がおかしい、偏っているなど解説されています。
この教育法が良い!と断定する訳ではなく、淡々と数々の実験や統計について事実を述べられます。
因果関係と相関関係を分けている
因果関係とはAの原因はBであると明示できる関係です。
相関関係ではAとBが同時に起こっているだけという可能性も含みます。
つまり研究結果を紐解くには因果関係が重要になってくるのです。
「学力の経済学」では因果関係と相関関係についても記載されており、研究データの読み方を私たちに教えてくれる本でもあります。
「学力の経済学」では読書量と学力は相関関係だと書かれています